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災害リスクは軽視せず、ハザードマップは必ず確認を

1週間前

上田太郎さん(サラリーマン大家)

会社員を経て、2001年より千葉市内の私立中高一貫校に理科教員として勤務。化学と進路学習を担当。2009年、区分1室を購入し、不動産賃貸業をスタート。2014年、前橋市、小山市で物件を購入。2015年、小山市の物件が、関東・東北豪雨により床上浸水。賃貸経営の危機に陥るも、なんとか復旧。2017年、甲府市に新たな物件を購入。


サラリーマン大家の上田と申します。群馬、栃木、山梨にRCマンション計3棟を所有しています。昼職は、私立中高一貫校の化学の教員で、勤務先了承の上で大家業を行っています。進路学習の一環としても役に立つかなと思い、時間が取れれば生徒にも投資や不動産の話をすることがあります。今回は2015年に発生した関東・東北豪雨での失敗についてお話しいたします。

自身のリスク管理の甘さが招いた被災

それでは、2015年の関東・東北豪雨で床上浸水の被害にあったお話しをします。そもそも、自然災害はしかたないことではなく、今回の被害は、自分のリスク管理の甘さが被災につながったものだと思っています。また、水災と土砂災害のリスクは、実は多くの大家さんが、その深刻さを理解しないまま抱えているのではないかと思っています。

大家さんの取るリスクの分類と災害リスク

大家さんの取っているリスクは、次のような三つの軸を持っています。左から右に行くほど損害も大きく、対処も難しくなっていきます。

※3つの軸は実際には、縦、横、奥行きのように異なる方向を向いています。

ゆっくり進行→早く進行→突然

損害が小さい→損害が大きい→損害甚大

ごく稀→頻度は低→頻度は高

例えば、空室リスクは、頻度は中、損害は小から大へゆっくり進行します。金利上昇リスクは、頻度は中~低、ゆっくり進行(世の中の情勢にも大きく左右されます)、損害は中~大だと思います。

水災や土砂災害は、頻度は低ですが、損害は大~甚大で、突然やってきます。

物件内での殺人事件は、頻度はごく稀ですが、損害は甚大で、突然やってきます。

損害が大きくても、頻度が低ければ全体のリスクは小さくなりますし、進行がゆっくりであれば損害を抑えるための対処は容易になります。

注目すべき点の一つは、最近は災害の頻度が上がってきているということです。数十年に一度のレベルといわれる水害や土砂災害が、なぜか毎年のようにどこかで起きています。2015年の関東・東北、2018年の西日本、2019年の九州……。

私は、関東・東北豪雨にて、物件の一つが1階すべての床上浸水の被害を受け、苦労して復旧した経験があります。(被災と復旧については、また機会があれば書かせていただきたいと思います)

覚えておいていただきたいのは、水災や土砂災害は、物件購入時の選択により、頻度を大幅に下げることができるということです。

仲介業者さんが、ハザードマップを資料としてくれる場合があります。水害や土砂災害の危険がある区域にあることを心配していても、物件を売りたい営業マンは、「まあ、大丈夫でしょう。被災するとしても何十年に一度のレベルです。」などの説明で流してしまいます。

実際に被災経験がある立場から言えば(自分の反省も含めてですが)、それに乗っているようでは甘いと思います。ハザードマップは必ず自分で確認し、危険度に応じて購入を見送るか、リスクを織り込んだ指値交渉をするなど、合理的に対応すべきではないでしょうか。

水災や土砂災害のハザードマップは、自治体によっても違うようですが、危険区域は危険度に応じて、黄、オレンジ、赤などに色分け(危険度が少ない区域は白)されています。赤はおそらく論外ですが、黄色やオレンジ(水災の場合は0~0.5mと0.5m~3m)の区域をどう考えるかは、人によります。日本は川が多く、近くに全く川が流れていない物件は少ないと思います。ハザードマップで白の区域でも、よく見ると少し離れている場所に黄色の区域があったりします。そういう物件は、白の区域にあっても安心はできません。

水災のリスクについて

水災に遭うと、下の階から被害を受けます。浸水には、床下浸水と床上浸水があり、どちらにしても、1階の部屋は復旧工事が必要になります。

まず、床上浸水の場合、床をはがして、床下の排水・乾燥・消毒、床のはりかえが必要になり、放置すればニオイや感染症の発生などの危険があります。畳の部屋ですと、畳は廃棄・交換になります(簡単にカビが生えます)。また、吸水した壁のボード部分交換、建具や備え付け家具の交換、クロスの張り替えなども必要です。

ただし、火災保険の水災特約をつけていれば、保険がおりますので、費用面でのダメージは少ないでしょう(大事なことなので2回言いますが、火災保険には必ず、水災特約を付けましょう!)。ただ、入居者さんに2週間程度、他の部屋に移ってもらって工事をしなければならないので、その移動先や工事日程の調整などには苦労します。サラリーマン大家さんの場合、そんなことに時間的、心理的労力を費やすことになれば、本業にも影響しかねないダメージを受けるでしょう。

次に、床下浸水の場合、床上浸水と同様、床下と床の張り替え工事が必要になります。建具や壁などの被害がない分、修繕費は少ないかもしれませんが、困ったことに、床下浸水には保険がおりません(地盤面から45cm以上あればおりますが、そこまで来れば通常は床上まで水が来ます)。物件の規模によりますが、床下浸水の被害に遭うと、数百万円~1千万円の経済的ダメージを受けることになります。小規模な大家さんなら、廃業の危機です。

床上、床下共通ですが、もし、入居者さんが、車や家財などを失った場合は、その後の家賃滞納の原因にもなります。被災して大きな損害を受けた入居者さんに対し、問答無用で賃料を請求することは人情的にも難しく、ある程度の期間、待たざるを得ない状況も考えられます。入居者さんに入ってもらう家財保険については、1階の部屋には必ず水災特約を付けるべきだと思います。ただ、マンション用の家財保険には、水災特約が標準装備されていないものもあるので注意が必要です。

以上のことから、物件購入時のハザードマップは、かなり重要視する必要があります。私は、ハザードマップで赤の区域やそれに近接した黄色やオレンジの区域にある物件は、安くても買いません。黄色やオレンジの区域にある物件の場合、相場よりも安い物件でなければ購入を見送った方がいいと思っています。

抱えている所有物件のリスク

一度、物件を取得してしまうと、なかなか売却ができません。実際に、私の所有する物件のうち2棟は水災のリスクを抱えていて、そのうち一つは実際に被災しました。

被災したのは栃木県小山市の物件で、前述のように、関東・東北豪雨で床上浸水しました。1㎞ほど離れたところを流れる川の水位が、想定最大水位を1m以上もオーバーして氾濫しました。現在ハザードマップでは、オレンジの区域になっています。

水災のリスクを抱えているのが群馬県前橋市の物件で、ハザードマップではオレンジの区域となっています。住居は2階以上にあるので、水害では部屋への影響は考えられないため、購入時にはリスクを考慮しませんでした。しかし、この物件は地下に駐車場があり、地下の電気系統の被害が考えられますし、入居者さんの車が水没すれば、先ほども申し上げた通り家賃滞納につながります。車の被害を補償するのは家財保険ではなくて車両保険です。入居者さんが車両保険を付けてくれていればいいのですが、それは把握できません。数十年に一度レベルのことが起きない限りは大丈夫とのことですが、売却までに水災に遭わないことを祈るばかりです。

購入物件検討時にすべき対策

物件の資料を取り寄せたら、まずグーグルマップなどで周辺の地形を確認しましょう。川や崖などが近くにあれば要注意です。

次に、各種のハザードマップを検索してダウンロードします。「ハザードマップ (市区町村名)」などで検索すれば、すぐに入手できます。ハザードマップは小さくて細かいですが、グーグルマップなどと照合し、物件の位置の危険度を知ります。なお、水災と土砂災害のハザードマップの確認は必須だと思います。 後は、前述の通り、リスクをどう考えるかです。ハザードマップの危険区域のリスクは価格に織り込まれていない物件が多いので、現地調査の時も、周辺の地形や、現地の不動産会社への聞き込みでリスクを事前に調査した方が良いと思います。

入居付け時にすべき対策

入居者さんに入ってもらう家財保険は、管理会社さん任せにせず、内容を確認する必要があります。何度も申し上げますが、1階の部屋なら、水災特約が必要です。もし、水災特約がなければ、大家さん負担でもいいので、特約の追加など付けてもらいましょう。

私の場合、前の所有者さんが入居させた居住者さんで、保険に入っていなかった人がいて困りました。幸い、家賃滞納には至らなかったのですが、ひやひやしました。

失敗から学んだ、「気を付けるべきポイント」

・物件の購入前にグーグルマップで周辺の地形とハザードマップを自分で確認する

・物件の火災保険には必ず水災特約を付ける

・1階の部屋には必ず水災特約を付ける(マンション用の家財保険には、水災特約が標準装備されていないものもあるので、注意)

以上、私の失敗談も含めて、災害リスクへの対応について書いてみました。お役に立てれば幸いです。

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